アメリカのジョブマーケットの厳しい現状について

TLDR

  • アメリカのジョブマーケット(雇用市場)はかなりひどい状態。職探しに半年かかることも珍しくない状況。
  • 前回の技術書典で海外キャリアチャレンジ本を出しておいてなんだけど、アメリカのIT市場に挑戦するのは全くおすすめできない
  • 駒城の最近の話

はじめに

駒城です。前回の技術書典で海外キャリアチャレンジ本を出しましたが、海外エンジニア就職の明るい面だけを喧伝して回るのは説明責任に乏しいなぁなんて思ったのでこの記事を書いています。海外キャリア本の外伝・フォローアップ記事みたいな感じで読んでください。
おととし・去年の時点からしアメリカのジョブマーケットはまぁまぁ悪かったのですが、昨年の技術書典で自著を頒布した時点では、悪いなりにこれから上向いていきそうな様子だったので「まぁこれを読んだ人が意思決定するころには良くなってるだろう」などと思ってそのまま頒布をしました。
しかし、今年に入ってからまたジョブマーケットは急転直下し、今やリーマンショックに匹敵する氷河期と言われるくらいひどい状況になってしまいました。 筆者の最近の様子も交えつつこの辺のお話をしたいと思います。

アメリカの最近のジョブマーケット

前述のように、「リーマンショックに匹敵する市場の悪さ」です。
僕から説明するよりも、下記の記事を読んでいただいた方が分かりやすいと思います。

  1. www.cnbc.com
  2. The job market is HELL. : r/jobs

僕の周囲から聞いた話も加味すると、以下のような感じです。

  • エントリーポジション(未経験枠)はほぼない。少なくとも3年、たいていの求人は5~10年その業界で実務経験がある人しか雇われない
  • 1つの求人に数千~数万人が殺到している
  • 求職者は毎日数十の求人に応募している。それでも面接にすら繋がらない。
  • レイオフされてから次の仕事が決まるまでに半年~1年かかるのはザラ
  • これを好機と詐欺やゴースト求人(実際には募集してないのに出ている求人)が溢れていて、もはや本物を見極めるのも一苦労

宝くじを当てに行くようなものだと思います。コストは体力と精神力。Redditのスレッドでは、「今の状況なら毎月500件応募してやっとスタートラインだよ」なんて書き込みもありました。本当にそうだと思います。ひたすら数を打ってリクルーターからのコンタクトを待つしかない状態。
アメリカで永住権を持っている人々ですらこんな状況です。そのため、ビザの制約がある外国人は必然的に採用優先度が下がります(会社はできればビザスポンサーなどというお金と時間がかかることはしたくないので、それらが必要な外国人は採用したくないのです)。

そんなわけで、今アメリカに挑戦してみようとするのは全くおすすめできない状況です。
この記事で最もお伝えしたかったことはこれです:今はここに来てはいけない

求人詐欺とゴースト求人

これが結構怖い。求人の中に個人情報を集めたいだけの詐欺が混じっています。
僕も既に何件も受け取っていますが、実在の会社を名乗ったり、ペーパー企業を名乗ったり様々な方法で求職者に直接メールを送り、個人情報を盗んだり、特定のファイルを開かせてウィルス感染させたりしようとしてきます。
ここをクリックして詳細をご確認ください、がフィッシングサイトだったりもします。
また、ゴースト求人というのも氾濫しています。詳しくはわかりませんが(そしてRedditなどの情報なので不確かですが)、求人を出すと政府から補助金が出る地域があるそうです。
その補助金目当てに、実際は雇う気はゼロなのに求人を出すわけです。そういう企業からは大抵お祈りメールすら来ません。
けれども求職者にはその見分けがつかないので、大事な時間を消耗してゴースト求人にも応募してしまうわけですから、とんだ迷惑です。

筆者や筆者の周囲の最近

アメリカの大学は12月と5月が卒業時期で、僕は5月に卒業予定です。3月半ばの現在の時点でゼロ内定です。
それどころか、昨年12月に卒業した元クラスメイトたちもまだ仕事が決まらず苦しんでいます。つなぎの仕事・インターンシップを見つけられた子たちはちらほらいますが彼らはラッキーですね。
我々留学生は卒業後OPTという制度で働くことができるのですが、90日間までしか無職期間が許されていません。つまり、(それぞれの状況によるところはありますが)卒業後90日間の間に仕事を決められなければタイムオーバー帰国です。この時間的プレッシャーと戦いながら暗中模索で就活をするのはかなり精神的に厳しいです。

先ほどゼロ内定と書きましたが、正確には、今のところ400以上応募して書類選考が通ったのはゼロです。
履歴書が悪いのか?カバーレターの書き方が下手なのか?などなど色々と周りにも相談しましたが、「君は全く悪くない。市場が悪すぎる」と言われました。少し安心する反面、自分に改善できることがないのはかなり八方ふさがり感が強まりますね。やばぁい。
日本にいたころもここまで就職で苦しんだことはありませんでした。マジきついです。

さいごに

そんなわけで、前回技術書典の自著のフォローアップ的な感じでこの記事を書いてみました。今のアメリカジョブマーケットのやばさが伝わったでしょうか。
早く採用数が回復してほしいところですが、いつジョブマーケットが回復するか誰にも分かりません。しいてわかるとすればFRBとかですか?
もしかしたらこの後良くなるかもしれないし、そうであってもその後また悪くなるかもしれない。今採用されても数か月後にレイオフされるかもしれない。とてもとても暗中模索です。
とりあえず、タイムオーバーにならないことを祈るばかりです…